ピープル・マネジメントに向けて

「スキル・ギャップの解消」だけでは不充分! 〜「ピープル・マネジメント」へ〜

「戦略と組織」に関して大別すると、次の2つの考え方が広く知られています。

  • 「目的や戦略、中長期の業績目標などを定めてから、それらを達成するために必要な人財などの経営資源を計画的に配備することが重要である」(『組織は戦略に従う』…「戦略→組織」のアプローチ
  • 「実現可能な戦略は、組織能力に規定される。他社との差別化を図るには、組織の特性を活かした戦略立案が重要である」(『戦略は組織に従う』…「組織→戦略」のアプローチ

ここで、「真逆の対立する考え方であって、どちらか一方だけが正しい」と捉えるのではなく、市場や自社の状況に応じて、2つの考え方を「柔軟に切り替えていく」ことが大切だと、弊社では考えています。

同時に、産業間の境界線が曖昧となって、伝統的な産業構造を適用して戦略を考えること(「戦略→組織」のアプローチ)が難しくなってきている現状を踏まえ、「組織→戦略」のアプローチ(創発的なアプローチ)に意識を向ける企業が増えてきていると捉えています。

4つの戦略

「戦略→組織」のアプローチを採用する場合には、「戦略実現に求められるスキル」と「組織構成員の現在のスキル」のギャップの解消に取り組むことが、「組織能力の向上」を図るうえで重要でした。

ところが、「混沌として先が読めない状況」が増えるにつれ、「組織→戦略」のアプローチの重要性が増している現在では、スキル・ギャップの解消に取り組むだけでなく、エンゲージメント(Engagement:会社のために自発的に貢献しようとする状態;深い対話を通して、共感できる目的を共有して、自ら本氣で仕事に取り組む状態)の向上に取り組まなければならなくなってきています。

また、「少子高齢化」「グローバル化」に伴って「優秀な人財の採用が困難化」し、部門を超えた取り組みが増えるなど「仕事内容が複雑化」するうえに、「求められるスキルの短命化」が進み、さらに、介護と仕事の両立や在宅勤務が増えるなど「ワーク/ライフスタイルが多様化」するといったさまざまな環境変化に伴って「人財の流動化」が進む中、組織としてリテンション(Retention:必要な人財を保持するための施策)にも取り組まなければならなくなってきています。

そして、こういった時局の要請に応えるため、少数のタレント(Talent:「特定の事柄を上手に成し遂げる能力を持ち、プロジェクトや組織にとって適切な人財」あるいは「組織内外から選び抜かれた優秀な人財」)のマネジメントをしているだけでは不充分であって、

「全社員一人一人を自社の『個客』のように見なして接すると共に、『自分が会社のミッションの一部である』と感じてもらえるように接し、社員一人一人が『自分は、会社の所有者である』という『当事者意識』を持って働きながら『喜びや意義を感じることができる環境』を整備する」というピープル・マネジメント(People Management)に向かおうとする意識が、業種・業態・規模にかかわらず、さまざまな組織の間で高まってきています。

「社員 = 歯車」から、「社員 = 個客」、「社員 = 会社の所有者」へ!

社員を「顧客のニーズに応え、組織に価値を加える、代替可能な要素(歯車のような存在)」として見るのではなく、「社員一人一人を『個客』あるいは『会社の所有者』であると捉えて接することで、『各人独自の良さを活かして価値創出に取り組んでもらえる環境』を整える」というのは、なかなか大変なことです。

その理由として、まず、私たち自身の価値観が多様になってきていて、社員一人一人の主体性や活力の引き出し方が異なることが増えてきているため、「画一的な情報発信ではなく、個別対応が求められる」という事情が挙げられます。
「顧客から個客へ」という「個別対応に向かう流れ」は、自社内の人財対応にも当てはまるということです。

次の理由としては、社員一人一人を「個客」と捉えて接するのが適切な場合と、「会社の所有者」であると捉えて接するのが適切な場合があるというように、「『同じ相手』に対してであっても、目的や状況に応じて、働き掛ける側の『役割』や『働き掛け方』を『柔軟に変更』しないといけない」ということが挙げられます。

…例えば、「生きていく上、働いていく上で『何を大切にするのか?』を明らかにし、内発的動機に基づき、主体的に考えて行動を起こす関係者が増えるようにする」など、相手の状態を観察しつつコミュニケーション方法を変えるといった形で、「社会情動的スキル」(非認知能力)を発揮することが求められます。 これは、「大勢を前にしてプレゼンテーションを行う」のとは別の能力です。

さて、あなたが所属される組織では、こういった意識改革についてどのように向き合うのでしょうか? 「重要だけれども、大変そうだから取り組まない」のでしょうか? それとも、「大変な面もあるかもしれないけれど、重要だから取り組む」のでしょうか?

短時間で核心を突きつつも、意欲を引き出す! 〜現場での話の「質」を高める〜

「ガス抜き」「氣分転換」などに役立つ、とりとめもないコミュニケーションの「量」を増やすことも、「現状の『不満』を解消する」ことも確かに大切ですが、「ピープル・マネジメント」という文脈でお伝えしたいのは、

将来の『不安』を『可能性』に変えるには、現状をどう捉え、『何にどのように取り組むのが当事者にとって望ましいのか』、そしてそれをどのように『個客や組織への貢献につなげていく』のが望ましいのかについて、具体的な方策を『協創』する

といった形の「質」の高いコミュニケーションが不可欠になってきているということです。

効果的な「ピープル・マネジメント」を実現するには、「数ヶ月に1度の個人面談」では、圧倒的にコミュニケーション量が足りません。 「日常業務の現場で、社員どうしが適宜、相互にコミュニケーションを行う」ことが求められます。

もう少し具体的に表現するならば、「業績向上に向け、何か出来事が起きたら、何か思いついたら、『その場』で、適切なコーチング(日常業務の中で適宜行う『成長を促すフィードバック』、状況変化に応じた『目標の迅速な修正』、『各人の強みに意識を向け、各人に適したやり方で学び合う』など)を行うことが求められる」ということです。

表現を変えると…「混沌として先が読めない状況において、会社が生き残るための、危機感を抱いた重要施策のひとつ」として、効果的な「ピープル・マネジメント」を実現するには、「『現場における短時間の対話』で『適切なコーチング』(質の高いコミュニケーション)が行える社員を増やさなければならない」ということです。

そうは言っても、いきなり全社員がお互いに「適切なコーチング」を行える状況にするのは難しいという組織が多いのではないでしょうか。 すると、誰から「適切なコーチング」を身に付けて実践し始めるのが良いでしょうか?

多くの組織では、「経営幹部やキーパーソンの言動・態度」が「企業文化や職場の雰囲氣」に与える影響が大きいのが実態であり、やはり、「意識や行動を変容」させたり、「適切なコーチング」のような質の高いコミュニケーションを体得したりするのは「経営幹部やキーパーソンから!」が効果的です。

「会社を成長させるためには、社員の手本となるよう、経営者をはじめとするエグゼクティブから、自己成長や自己刷新(意識や行動の変容)に向けて取り組まなければならない!」

と考え、「自分を次のステージに高める!と決断した方」が活用するのが「エグゼクティブ・コーチング」なのです。
 


※1 コーチングの「研修」や「OJT」(On-the-Job Training:日常業務を遂行する過程での教育訓練)への導入は、「エグゼクティブ・コーチング」を実際に活用され、効果を確かめたりしてから検討される場合もありますし、最初から「エグゼクティブ・コーチング」と「経営者を含む少人数のエグゼクティブ向けトレーニング」を併用される場合もあります。 御社の状況・事情などに合わせてご活用ください。


※2 「標準化や制度の厳格な運用」を重視するあまり、「個別対応が重要」という話を受け容れづらい方もいらっしゃるかもしれません。 そこで、この辺りについて、弊社なりの考え方をお示ししておこうと思います。

例えば日本では、終戦後の「必要なものがあればいい」時代から、「他の人と同じものが欲しい」→「他の人より良いものが欲しい」→「他の人とは違うものが欲しい」→「自分らしさを表現するものが欲しい」などと、次々に物質的な欲求を満たし続け、モノが溢れるようになった現在では、「量よりも質」、「物質的な贅沢さ」とは異なる「精神的な豊かさ」など、「QOL(人生の質)の向上」を求める傾向が強まってきたとも言われています。

つまり、「生存欲求を満たすために最低限のモノを求める状況」であれば、「みんながほぼ同じ要望」を持つけれど、「(客観的な『安全』と異なる)主観的な『安心』や、『自己表現』などを求めて、多様な価値観を持つ人が多い(標準値から外れる人が多い)状況」になると、「多様な事情や個人特性から、他者と異なる要望」を持つ人が増えるのが自然だということです。

「他者に迷惑をかけるわがまま」や「他者よりも自分の利益だけを優先させたい」といった要望であれば、受け付けなくてよいと思いますが、「個々人の多様な事情や価値観から生じた真摯な要望」であれば、可能な限り個別対応しようとするのが、今後の組織に求められる姿勢ではないか?と、弊社では考えています。


※3  上述の内容に関係の深い参考情報をお示ししておきます。関心のあるものをご覧になってみてください。

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